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【2026年6月】介護報酬の臨時改定と処遇改善加算「新区分」を深く読む|八尾市の介護事業所動向から見える次の一手

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こんにちは。総合福祉支援サポートのファイナンシャルプランナー岡田です。

介護業界にとって、2026年は“制度の空気”が大きく変わる年になりそうです。
政府は2026年6月に臨時の介護報酬改定を行い、介護報酬を2.03%引き上げる方針を示しました。さらに、処遇改善加算に新たな区分(Ⅰロ・Ⅱロ)を設け、生産性向上などに取り組む事業所へ上乗せする仕組みが提示されています。

今回のニュースは「賃上げ」という明るいテーマの一方で、現場の実務としては制度がさらに複雑化する側面も否定できません。
本記事では、福祉新聞Web介護ニュースJointの2つの報道を材料に、変更点を整理しつつ、八尾市の事業所動向も踏まえて深く考察します。


冒頭:専門用語の補足(ここだけ読めばニュースが追えます)

  • 介護報酬(かいごほうしゅう):介護サービス事業所が、介護保険から受け取るサービスの単価。改定があると事業所の収入構造が変わります。
  • 臨時改定(りんじかいてい):通常の定期改定(次は2027年度が想定)とは別に、途中で行う改定。今回は2026年6月に実施予定です。
  • 処遇改善加算(しょぐうかいぜんかさん):職員の賃上げ等の原資を確保するために、介護報酬に上乗せされる仕組み。段階(区分)があり、取得要件が存在します。
  • 加算Ⅰ〜Ⅳ:従来の処遇改善加算の区分。今回、加算率が引き上げられる方向です。
  • 加算Ⅰロ・Ⅱロ(新設):生産性向上や協働化に取り組む事業所の介護職員に、上乗せするための新区分。
  • 生産性向上推進体制加算:業務改善・生産性向上の取り組みを評価する加算(新設区分の要件にも関係)。
  • ケアプランデータ連携システム:ケアマネと事業所間の情報連携をデータで行う仕組み。新区分の要件として言及があります。
  • 居宅介護支援:ケアマネジャーがいる事業(これまで処遇改善加算の対象外だったが、新設する方向)。

ニュースの要点まとめ:何が起きるのか

1)臨時改定で、賃上げの“土台”を作る

福祉新聞Webによれば、政府は2026年6月に臨時で介護報酬を改定し、2.03%引き上げる方針です。
狙いは、介護職員だけでなく事務職も含めた介護従事者を対象に、幅広く月1万円の賃上げを進めること。さらに、生産性向上などに取り組む事業所の介護職員には月7000円の上乗せを設計しています。

2)処遇改善加算に「新区分(Ⅰロ・Ⅱロ)」が新設

大きな特徴は、従来の加算Ⅰ〜Ⅳを引き上げるだけでなく、上位の新区分(Ⅰロ・Ⅱロ)を追加し、取り組みに応じて積み上げる構造にした点です。

福祉新聞Webでは、例えば加算Ⅰロの加算率として、
訪問介護 28.7%デイサービス 12%老健 9.7%など、サービス種別ごとの水準も示されています。

3)対象の拡大:居宅介護支援なども“処遇改善の枠”へ

介護ニュースJointでは、処遇改善加算の対象が「介護職員」から介護従事者へ広がり、居宅介護支援、訪問看護、訪問リハなども対象サービスに加わる点が大きいと報じています。

4)現場の不安:制度がまた複雑に…「加算より基本報酬を」の声

同じくJointは、審議会で「加算が重層化して複雑」「小規模事業所が取得できるのか不安」といった懸念が示されたことも伝えています。


ここからが本題:この改定を“深く読む”3つの視点

視点①:これは“賃上げ”だけの話ではなく、事業所の「体質改善」を促す設計

今回の特徴は、単に「全体を上げる」よりも、取り組み(生産性向上・協働化)で上乗せする仕組みに寄せている点です。

言い換えると、臨時改定は「一律の救済」ではなく、“頑張っている事業所に届きやすい”構造を意識しています。
ただし、それは裏返すと、取り組みを形にできない事業所ほど置いていかれる可能性もある、ということです。

視点②:「人材確保」から「生産性の再設計」へ、国の関心が移っている

介護業界の慢性的な人手不足のなか、賃上げは“必要条件”になりつつあります。
しかし賃上げだけでは、離職・採用難を止めきれない現実があり、結果として国は業務効率・ICT・協働化へ舵を切っているように見えます。

制度上のメッセージははっきりしていて、
「人が増えないなら、回し方を変える」
という方向性です。

視点③:最大の課題は“複雑化”が現場に与える摩耗

Jointが報じたように、委員からは「加算区分が複雑になり取得できるか心配」という声も出ています。

加算制度が増えるほど、現場はこうなります。

  • 書類・誓約・実績管理が増える
  • 請求・事務の確認コストが上がる
  • 管理職が“現場支援”より“制度対応”に追われる


賃上げの原資を取るために、別の負担が増える。

このジレンマを、事業所がどう受け止めるかが、2026年の分かれ道になりそうです。


八尾市の現実に当てはめる:事業所数と地域特性から見る「追い風」と「課題」

八尾市は“介護資源が多い都市型エリア”

地域介護資源の集計(JMAP)では、八尾市の介護施設数(合計)は588、そのうち訪問型231通所型123入所型61と示されています。

特に訪問型は、75歳以上人口1千人あたりの指標で全国平均を上回っており、在宅系サービスが厚い地域性が読み取れます。

一方で、八尾市は認定者数・認定率が上がっている

八尾市の第9期介護保険事業計画(概要版)では、令和5年度(2023年度)の要支援・要介護認定者数は18,217人、認定率は24.7%で過去最も高い水準と記載されています。

つまり八尾市は、サービス供給(事業所数)も多い一方で、需要(認定者)も確実に増えている
この状況で制度改正が入ると、現場には次の圧力がかかります。

  • 人材確保競争がさらに激化する
  • 賃上げの流れに乗れない事業所が疲弊しやすい
  • ICT・生産性向上の“できる/できない”格差が拡大する

所見:八尾市の事業所が今後とるべき「現実的な打ち手」

1)まずは“取れる加算”を確実に取る(感情ではなく設計で)

制度が複雑でも、加算が事業の体力を左右する以上、まずは「取得できる加算を落とさない」ことが重要です。
特に新区分(Ⅰロ・Ⅱロ)に関しては、要件が絡むため、年度計画として逆算する必要があります。

2)生産性向上は“現場を楽にする改革”として扱う

生産性向上が「国に言われたからやる」になると失敗しやすいです。
ここは発想を変えて、現場が楽になる改革=離職防止策として捉える方が実利が出ます。

  • 記録の二重入力を減らす
  • シフト作成・申し送りの標準化
  • 会議の短縮(目的と結論の見える化)
  • よくある問い合わせ対応をテンプレ化

こうした地味な改善の積み上げこそが、結果として“要件を満たす事業所”に近づきます。

3)八尾市は事業所が多いからこそ「協働化」が効く

Jointも福祉新聞も、生産性向上や協働化を評価する設計を示しています。

八尾市は介護資源が比較的多い地域だからこそ、
単独で抱えるより、地域で分け合った方が勝てる業務が存在します。

  • 採用広報(合同説明会、地域での採用導線づくり)
  • 研修(虐待防止・身体拘束・感染対策などを共同開催)
  • 事務・請求の相談窓口(知見の共有)

“競争の街”は疲れやすいですが、“連携の街”に変わると持続力が上がります。

4)最後に:制度は「追い風」ではなく「選別」を含む

今回の改定は、確かに賃上げの追い風です。
一方で、制度が複雑化するほど、現場は「やれるところから整う」傾向が強まり、格差が出ます。

八尾市のように事業所数が多い地域では、その差が表に出やすくなります。
だからこそ、2026年は“新しいルールへの適応力”そのものが経営力になる年です。


まとめ:2026年は「賃上げ」より先に“事業の回し方”が問われる

今回の臨時改定は、職員の処遇改善に向けた大きな一歩であり、評価できる側面があります。
しかし同時に、加算の重層化は現場の負担を増やし、取得できる・できないの差を生む可能性も含みます。

八尾市は介護資源が豊富な一方で、認定者数・認定率も高まっており、需給の圧力は今後も強まります。
だからこそ、今後に向けた現実的な打ち手は、

  • 取れる加算を落とさず、制度対応を“計画化”する
  • 生産性向上を“現場が楽になる改革”として進める
  • 地域内の協働化で、単独負担を減らす

この3点に尽きます。
制度改正はいつも現場に負荷をかけますが、見方を変えれば、整える力がある事業所が評価されやすい時代に入ったとも言えます。
2026年は、その分岐点になりそうです。

事業所向け:2026年6月の臨時改定に備える「チェックリスト10項目

ここからは読み物としての理解だけで終わらせず、現場で“そのまま使える”ように、 事業所向けの実務チェックリストをまとめます。
「できている/できていない」を確認しながら、2026年に向けた準備の優先順位づけにご活用ください。

  1. 自事業所の処遇改善加算の現状を把握しているか
    現在の取得区分(Ⅰ〜Ⅳ)/対象職種/配分方法(基本給・手当など)を一覧化し、説明できる状態にしておく。
  2. 新区分(Ⅰロ・Ⅱロ)の要件を“逆算”できているか
    「何を満たせば取れるか」だけでなく、いつまでに整備する必要があるかを年度計画に落とし込む。
  3. 賃上げ原資の見込み額を試算しているか
    加算取得・加算率変更で、月次の収入がどの程度増える見込みか、簡易でも試算し“使える範囲”を可視化する。
  4. 賃金改善の配分ルールが明確か(職種間・雇用形態)
    介護職だけでなく、事務職等を含む「介護従事者」に広がる流れを見据え、社内で揉めない配分設計を準備する。
  5. 生産性向上の取り組みが“現場に効いている”か
    「書類上やっている」ではなく、記録・申し送り・シフト・会議などで、実際に時間短縮や負担軽減につながっているかを確認する。
  6. ICTの導入状況と“使いこなし度”を把握しているか
    介護記録・請求・情報共有ツールが、現場に定着しているか(結局紙に戻っていないか)を点検する。
  7. ケアプランデータ連携システム等の対応方針があるか
    連携システムが要件化される可能性を踏まえ、導入の可否・費用・担当者・運用フローを最低限決めておく。
  8. “事務負担の増加”に備えた担当と手順があるか
    加算が複雑化すると、入力・確認・実績管理が増える。属人化せず、引継ぎ可能な手順書やチェック体制を整備する。
  9. 採用・定着の戦略が「賃上げ以外」にもあるか
    賃金だけで勝負すると消耗戦になりやすい。教育、評価、働き方(シフト・休暇)、職場環境など“辞めない仕組み”を点検する。
  10. 地域内の協働化(連携)の余地を検討しているか
    単独で抱えるより「共同開催」「合同採用」「研修の共通化」など、地域で分け合える業務を探し、ネットワークを持っておく。

この10項目は、すべてを完璧にする必要はありません。
大切なのは「制度改正の情報を追う」だけで終わらせず、自事業所の運営に落とし込んで、改善を積み上げることです。
2026年は、賃上げの年であると同時に、事業所の“整える力”が試される年になりそうです。

参考(ソース)

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総合福祉サポート
2023年より設立した福祉系法人。
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