介護保険は「全国一律」から「地域最適」へ|2027年度制度改正のポイント解説
2026年1月5日付の「介護ニュースJoint」は、次の介護保険制度改正(2027年度予定)の大枠が示されたことを伝えました。今回の改正は、これまでの「全国一律のサービス基盤」から「地域ごとのサービス基盤」へと舵を切る、大きな転換点になるとされています。
ここでは、そのニュース内容を整理しつつ、介護事業者やケアマネジャーが押さえておきたいポイントを分かりやすくまとめます。
今回のニュースの概要
2025年12月25日、社会保障審議会・介護保険部会が、2027年度の介護保険制度改正に向けた意見書を取りまとめました。報道では「利用者負担2割の対象拡大が先送りされた」ことが注目されましたが、Jointの記事が強調している本質は別のところにあります。
それは、介護保険制度が創設以来続けてきた「全国一律」という考え方を見直し、地域の実情に応じた『地域最適』の仕組みに変えていくという方向性が明確になったことです。
「全国一律」から「地域最適」へ|何が変わるのか
これまでは、「どこに住んでいても一定水準のサービスが受けられること」を重視して、全国同じルールを基本としてきました。しかし現実には、次のようなギャップが生まれています。
- 高齢者人口そのものが減り、サービス需要がしぼみつつある地域
- 都市部のように高齢者が増え続け、サービス需要が膨らんでいる地域
この両者を同じやり方で支えるのは難しくなってきたため、厚生労働省は地域ごとに異なるルールや支援の仕組みを導入する方針を打ち出しました。
3つの地域類型で考える新しい介護保険
意見書では、全国を次の3つの地域タイプに分けて検討することが示されています。
- 中山間・人口減少地域:高齢者も含め人口が減少し、事業者の撤退や担い手不足が深刻な地域
- 大都市部:高齢者人口が増え続け、サービス需要が高い地域
- 一般市等:その中間に位置する、多くの自治体が該当する地域
特に「中山間・人口減少地域」については、従来とは異なる大胆な施策を複数組み合わせてサービスを維持していく構想が示されています。
中山間・人口減少地域で検討されている新スキーム
1. 特例介護サービス(新しい類型)の創設
サービス提供の担い手が不足する地域では、現行の人員配置基準や常勤・専従要件をそのまま当てはめると、事業運営が成り立たないケースがあります。
そこで意見書では、ICTの活用などを前提に人員要件を柔軟に見直した「特例介護サービス」という新しい類型を設けることが提案されています。これにより、少ないスタッフでもサービスが継続できるようにする狙いがあります。
2. 訪問介護への「包括評価(定額報酬)」導入案
訪問介護は現在、原則として出来高払いです。そのため利用者数が少ない地域では、売上が不安定になりやすいという課題があります。
意見書では、出来高払いに加えて一定額をまとめて評価する「包括評価(定額報酬)」を選べるようにする構想が示されています。事業者にとっては、収入の予見性が高まり、撤退を防ぐ効果が期待されています。
3. 市町村事業としてサービスを維持する仕組み
さらに、介護保険の財源を活用した市町村主体の事業スキームも検討されています。訪問や通所サービスの運営を市町村が事業者に委託し、利用者数が少ない地域でもサービス提供を続けられるようにする形です。
いわば「公営化」や「公設民営」の選択肢を強化するもので、地域の状況に合わせた現実的なサービス維持策として位置づけられています。
2027年度改正までのスケジュール感
厚生労働省は、2026年の通常国会に介護保険法などの改正案を提出する予定とされています。新スキームの具体的な中身は、今後、社会保障審議会・介護給付費分科会などで詰めていく流れです。
- 2025年度:意見書の取りまとめ(方向性の確認)
- 2026年度:法案提出・国会審議、詳細設計
- 2027年度:地域類型ごとの新ルールが順次スタート(見込み)
順調に進めば、2027年度からは「住む場所・働く場所によって適用されるルールが変わる介護保険制度」が本格的に始まることになります。
介護事業者・ケアマネが今からできる準備
1. 自分の地域がどの類型に入るのかを確認する
まずは、自社の事業所が「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」のいずれに位置づけられるのかを把握しておくことが重要です。地域類型によって、これから議論されるルールや支援策の内容が変わってくる可能性があります。
2. 新しい報酬・運営の形をイメージしておく
特例介護サービスや定額報酬が導入されると、これまでとは違う前提で経営を考える必要が出てきます。
- 少人数でも回せるシフトや業務分担
- ICTを活用した記録・情報共有の仕組み
- 訪問回数だけに依存しない収支モデル
こうした視点で自事業所を見直しておくと、制度改正後の対応がスムーズになります。
3. 市町村との連携を強める
市町村が主体となるスキームが増えるほど、自治体との関係性はより重要になります。
- 地域ケア会議や説明会への参加
- 地域包括支援センターとの密な情報共有
- 介護保険事業計画・地域包括ケア計画の把握
日頃から地域の会議や計画に目を通しておくことで、「気づいたら制度が変わっていた」という事態を防ぐことができます。
八尾市ではどう考える?|「地域最適」の中で見えてくる課題とチャンス
ここまで見てきた介護保険の「全国一律から地域最適へ」という流れを、八尾市に当てはめて考えてみます。
八尾市は、大阪市に隣接する中核市で、ものづくり企業が集積した都市部に近いエリアに位置しています。一方で、生駒山系や大和川など自然環境も残る「都市近郊型」のまちです。中山間・人口減少地域と大都市部の中間にある典型的な「一般市」のモデルケースと言えます。
八尾市の高齢化は「全国平均クラス」だが、介護ニーズは高め
八尾市の高齢化率は、令和2年国勢調査の時点で約29%とされています。これは全国平均とほぼ同水準ですが、要支援・要介護認定率は24%台と大阪府内でも高いグループに入っています。
また、令和5年度の資料では、第1号被保険者(65歳以上)の人数は約7.3万人、高齢化率は28%台後半で推移しており、今後も緩やかな人口減少とともに高齢化の進行が見込まれています。
つまり八尾市は、「高齢化は全国並みだが、介護サービスの利用ニーズは相対的に高い自治体」という特徴があります。
「地域最適」という視点で見ると、八尾市は何を重視すべきか
2027年度以降の介護保険制度で想定される3類型のうち、八尾市は中山間地域ではなく、都市部に近い「一般市等」として位置づけられると考えられます。その前提で、次のようなポイントが重要になってきます。
- 1. 予防と重度化防止に一層シフトする
認定率が高いということは、それだけ介護サービスの利用者も多いということです。第9期高齢者保健福祉計画でも、介護予防やフレイル対策、認知症施策の強化が掲げられており、「できるだけ軽い段階で支える仕組み」が一層重要になります。 - 2. 既存の事業者ネットワークをどう「最適化」するか
中山間地域のように事業者そのものが極端に不足しているわけではありませんが、エリアによってはサービスの偏在や、人材確保の難しさが生じています。
今後の「地域最適」の議論では、訪問・通所・施設・在宅医療をどう組み合わせていくか、八尾市内の圏域ごとにきめ細かく整理していくことが求められます。 - 3. 市町村独自の取組と国の新スキームをどう組み合わせるか
八尾市はすでに地域包括支援センターを中心に、多職種連携や見守り体制づくりを進めてきました。2027年以降は、国の制度改正で生まれる新しい枠組み(定額評価や市町村事業など)を取り込みつつ、「八尾版・地域包括ケア」として再デザインしていくことがポイントになります。
八尾市で介護・福祉に関わる事業者として意識したいこと
八尾市で介護・福祉の仕事に携わる事業者にとって、「地域最適」への流れは脅威というよりビジネスモデルの見直しと、連携のチャンスと捉えることもできます。
- 自社のサービスが、八尾市のどの圏域・どのニーズに応えているのかを整理する
- 地域包括支援センターや他事業所との連携・合同カンファレンスに積極的に参加する
- 在宅生活を支える周辺ニーズ(残置物の片付け、見守り、防災、生活支援など)にも目を向ける
とくに、空き家や老朽家屋の増加、単身高齢者世帯の増加といった課題は、介護保険制度の枠外であっても、日々の支援現場と密接に関わっています。
介護サービスと生活支援・家財整理・空き家対策をつなぐプレイヤーが増えることで、「八尾でずっと暮らし続けられる仕組み」に近づいていくはずです。
2027年度の制度改正は、八尾市にとっても大きな転換点になります。国の動きを追うだけでなく、「八尾の実情に合った介護・暮らしの支え方とは何か」を、行政と事業者、地域住民が一緒に考えていくタイミングと言えるでしょう。
まとめ|2027年改正は「構造転換」のスタートライン
今回の意見書は、介護保険制度が本格的に「地域ごとの最適解」を探るフェーズに入ったことを示しています。
- 全国一律から、地域の実情に合わせた制度運用へ
- 特に中山間・人口減少地域では、新スキームと特例サービスで事業継続をサポート
- 2027年度以降は、地域類型によってルールが変わる時代に
介護事業者にとっては、「制度が変わるのを待つ」のではなく、変化を前提にした準備を始めることが生き残りの条件になります。自分の地域の状況を知り、自治体と対話しながら、これからの数年間を戦略的に過ごしていくことが求められそうです。

