住宅型有料老人ホームに規制強化へ|登録制・更新制・囲い込み対策の要点と、私たちが進むべき方向
住宅型有料老人ホームをめぐり、2027年度の制度改正に向けて「規制を大幅に強化する」方針が示されました。 これまで届出中心だった枠組みから、一定の住宅型ホームを対象に登録制(事前規制)や更新制を導入し、 入居者の安心・安全と選択の自由を守りつつ、運営の健全化を進める――というのが大きな方向性です。
本記事では、介護ニュースJointの報道と厚生労働省資料をもとに、「何が変わるのか」をわかりやすく整理し、 そのうえで「私たちはどう進むべきか」を第三者の視点で考察します。 (※最終的な要件や運用は、今後の制度具体化で詰まっていく点にご留意ください)
まず結論:今回の規制強化で押さえるべき3つの軸
- 入口(参入):対象となる住宅型ホームに登録制(事前チェック)を導入
- 運営(継続):人員・設備・虐待防止などを法令上の規定として明確化
- 出口(是正・淘汰):更新制や不正事業者への制限で、質を担保し悪質ケースを排除
そして、もう一つの核心が「囲い込み」「使い切り」への歯止めです。 入居契約と介護サービス契約の紐づけ、主治医・ケアマネ変更の強要、同一・関連法人による不透明な運営などに対して、 ルール面を強める方向が明確になっています。
ニュースの要点|何が変わるのか(わかりやすく整理)
1)「登録制(事前規制)」の導入:対象は“中重度者・医療ケア”を受け入れる住宅型ホーム
登録制の対象として想定されているのは、中重度の要介護者や医療ケアを要する高齢者を受け入れる住宅型ホームです。 さらに、形式上はそうでなくても、実態としてそうした高齢者が暮らしている住宅型ホームも対象に含める考えが示されています。
これまでの届出中心の仕組みでは、参入段階での質管理が難しい面がありました。 今回は「入口」で一定の要件をチェックすることで、利用者保護と運営の健全化を図る狙いがあります。
2)人員・設備・虐待防止などを“法令で”明確化
登録制とセットで、介護・医療ニーズへの対応を想定した職員配置、設備基準、虐待防止のルールなどを 法令上の規定として整備する考えが示されています。
ここが重要なのは、単に「努力目標」ではなく、基準を明確にすることで自治体の指導・監督の根拠も強くなり、 “やっているつもり”では通りにくくなる点です。
3)「更新制」で参入後の質も担保/悪質事業者の新規参入を制限
参入後の質を担保するため、更新制を導入する方針も示されています。 また、不正行為などで行政処分を受けた事業者で、役員らの組織的関与が認められる場合は、 新規開設を一定期間認めない仕組みも設ける方向です。
「入口」だけを締めても、運営の途中で歪みが生じれば意味がありません。 更新制は、そうした“参入後の質”を支える仕組みとして位置づけられます。
4)「囲い込み」対策:紐づけ禁止、変更強要禁止、会計分離・公表
囲い込み対策として示されている主なポイントは次のとおりです。
- 入居契約の際に、関連法人の介護サービス利用を条件とすることを禁止
- かかりつけ医やケアマネジャーの変更を強要することを禁止
- 住宅型ホーム運営と介護サービス事業者が同一・関連の場合、会計を分離して公表し、透明性を確保
住宅型ホームは本来、入居(住まい)と介護サービス契約(訪問介護等)が分かれており、利用者が自由に選べる建て付けです。 しかし実態として同一・関連法人のサービスが“事実上一体”で提供されるケースが多いことも、厚労省資料で整理されています。 今回は、その歪みを是正する方向がより明確になった、と理解すると捉えやすいでしょう。
なぜ今、ここまで踏み込むのか|背景にある「住まい×介護」の構造
住宅型ホームの入居者は、生活の基盤である「住まい」を移しているため、サービスに不満があっても移動が容易ではありません。 そこに介護・医療サービスが事実上一体化していると、利用者側が選択しにくくなり、 結果として本人の希望や状態より、提供側の都合が優先されるリスクが高まります。
規制強化は、住宅型ホームという仕組み自体を否定するものではなく、 「入居者の安心・安全」と「選択の自由」を制度として守るために、 入口・運営・出口を整え直す動きだと読み解くのが本質に近いと思います。
私たちはどう進むべきか|“信頼される選択”をつくる8つの実務
ここからは、ホーム運営者だけでなく、紹介・相談・地域連携に携わる立場(私たち)も含め、 これからの時代に必要な「実務の方向性」を整理します。 規制への対応を“守り”で終わらせず、信頼を積み上げる“攻めの整備”に変えていく発想が重要です。
1)まず「該当しうるか」を棚卸しする(対象の見立て)
- 入居者の要介護度の分布
- 医療依存度(看取り、医療的ケア、訪問看護の関与など)
- 職員体制と夜間対応、緊急時対応
“いまは届出で足りている”という感覚のままでは、制度具体化のタイミングで慌てやすくなります。 先に現状を可視化しておくことが、最短ルートです。
2)入居契約と介護サービス契約を「説明」と「書面」で分離する
口頭で「選べます」と言うだけでは不十分になりがちです。 書面・パンフ・同意フローの導線として、 (1)住まいの契約と(2)介護サービスの選択が別であることを明確にしましょう。
3)主治医・ケアマネの“変更の自由”を、運用として担保する
変更希望が出たときに、現場判断で止まらない仕組み(受付窓口、期限、引継ぎ手順、情報連携の型)を先に決めておくことが、 コンフリクト防止に直結します。
4)同一・関連法人モデルは「会計分離+説明可能性」を設計し直す
住まい部門と介護サービス部門の収支が混ざると、外からは“何にいくら使われているのか”が見えません。 いま求められているのは、単なる分離ではなく説明できる透明性です。
5)「虐待防止・身体拘束適正化」を“書類”から“文化”へ
- 研修は「実例→判断→記録」の反復にする
- ヒヤリハットや苦情を、責任追及ではなく改善の材料にする
- 内部通報・相談ルートを実際に機能させる
ルールの整備はスタート地点で、最終的に問われるのは日常の運用です。
6)紹介・相談の立場は「中立性」と「説明責任」を武器にする
規制が強まるほど、紹介・相談の価値は「選択肢を整え、比較可能にすること」へ移ります。 比較表やチェックリスト(医療連携、夜間体制、退去条件、費用の総額、外部サービスの自由度など)を整備し、 説明の質で差がつく時代になります。
7)「入居後の暮らし」を中心にプランを組み立てる(サービスの適正化)
囲い込みや使い切りが問題視される背景には、“契約上の都合”がケアプランに入り込みやすい構造があります。 これからはより一層、本人の希望・生活課題・状態像を中心に置いたプランニングが求められます。
8)制度の「確定」を待たず、2026〜2027年に向けた改善計画を回す
今後、制度は細部(対象範囲、要件、更新の運用、開示項目など)を詰めていきます。 だからこそ、いまやるべきは「答え待ち」ではなく、 ギャップ分析 → 改善計画 → 記録(エビデンス)のサイクルを回しておくことです。
まとめ|規制強化は「まじめな現場」が報われる土台づくり
住宅型有料老人ホームに対する規制強化は、現場にとって負担増に見える側面もあります。 しかし本質は、入居者の安心・安全と選択の自由を守り、運営の健全性と透明性を高めることで、 信頼できる事業者が正当に評価される土台を作ることにあります。
これからは「何を提供しているか」だけでなく、「どう説明できるか」「どう見える化できるか」が問われます。 私たちが進むべき方向は明確で、中立性・透明性・運用の実効性を磨き、 利用者の暮らしを中心に据えた支援の質を上げていくことです。
参考資料・ニュース元
- 介護ニュースJoint:岐路に立つ住宅型老人ホーム 運営の健全化へ規制を強化 厚労省 方針固める(2026年1月6日)
https://www.joint-kaigo.com/articles/43057/ - 厚生労働省:有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会 とりまとめ(2025年11月5日公表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65637.html - 厚生労働省:社会保障審議会 介護保険部会「介護保険制度の見直しに関する意見」(2025年12月25日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68030.html

