介護の賃上げ補助金ではPCは購入できるのか── 最新Q&Aから丁寧に読み解く「使える費用・使えない費用」と今後の対応
(最終更新:2026年1月)
こんにちは、総合福祉支援サポートのファイナンシャルプランナー 岡田です。
介護現場では、職員の処遇改善とあわせて、記録の電子化や見守り機器の導入など、ICTによる業務改善の必要性が高まっています。 そのため「賃上げ補助金の職場環境改善経費で、パソコンやタブレットを購入できるのではないか」という期待も少なくありません。
しかし、厚生労働省が発表したQ&A(第1版)では、 職場環境改善経費でPC・タブレット等の購入は認められないことが明確に示されました。 本記事では、この内容を丁寧に整理し、勘違いが生じやすい点や、事業所が取るべき対応をわかりやすくまとめます。
1. 結論:今回の賃上げ補助金では「PC・タブレット等の購入は対象外」
厚生労働省のQ&Aでは、職場環境改善経費について明確な線引きが示されており、 PC端末やタブレット、見守りセンサー、インカムなどの機器購入は対象外とされています。
これは「ICT導入を推進しない」という意味ではなく、 “今回の補助金の目的”が設備ではなく人や運用の改善にあるためです。 ICT導入については、別途設けられている「介護テクノロジー導入支援」などの制度を活用することが想定されています。
2. なぜPCなどの機器購入が認められないのか
● 理由1:今回の補助金は「人への投資」に重点が置かれているため
賃上げ補助金は、介護職員の処遇改善を目的としており、職場環境改善経費も「研修」「体制づくり」「採用支援」など、 あくまで人や運用の改善に寄せた内容になっています。
● 理由2:設備投資を含めると管理が複雑になるため
PCやタブレットといった機器は、減価償却や他用途への転用が発生しやすいため、 補助金として適切かどうかを判断するための事務が非常に複雑になります。 そのため制度上は、最初から対象外として整理されています。
● 理由3:ICT導入そのものは「別の制度」で支援する仕組みがあるため
国としては介護現場のICT化を強く後押ししており、タブレット、スマートフォン、インカム、Wi-Fi機器……などの導入を支援する制度は別途整備されています。 今回の賃上げ補助金は、その役割を担うものではありません。
3. よくある誤解と注意点
誤解1:職場環境改善なら機器購入も含まれるのでは?
「職場環境改善」という言葉は広く見えますが、今回の補助金では用途が明確に限定されています。 あくまで研修や業務改善、役割分担の整理など、人や体制に関する取り組みが中心です。
誤解2:ICTへの投資が認められないわけではない
ICT導入に否定的なわけではなく、「購入できる補助金と、できない補助金が分かれている」というだけです。 機器を導入する場合は、ICT導入を目的とした補助金を使います。
注意点:誤解したまま購入すると、返還対象になる可能性がある
補助金は実績報告が義務づけられており、用途外で使ってしまうと返還を求められる場合があります。 わずかな誤解が大きなリスクになるため、制度の正確な理解が重要です。
4. 実務ではどう使えば良いのか(事業所向け整理)
職場環境改善経費は、以下のような取り組みに使用できる可能性があります。
- 研修費(職場環境改善に資する内容に限る)
- 介護助手などの募集にかかる経費(求人広告、チラシなど)
- 会議費(業務改善や委員会運営など、必要性が説明できる範囲)
- 専門家の助言(業務整理・体制整備に関するもの)
一方で、PC・タブレット・見守りセンサー・インカムなどは対象外のため、ICT導入は別制度で計画することが望ましいといえます。
また、これらの取り組みは「何を目的に、どのように実行し、どのような結果が得られたのか」を説明できる形で記録しておく必要があります。
5. 八尾市での状況と、地域として今取り組みたいこと
八尾市では、計画資料でも要支援・要介護認定者の増加が示されており、今後も介護サービスの需要が高まることが想定されています。 そのため、地域全体で「採用」「定着」「業務の回り方」を整えることが急務になっています。
● 今回の記事で伝えたいポイント
- 補助金の使い分けの周知
誤解を防ぎ、事業所のリスクを減らすための情報を丁寧に集める。 - 業務改善の共通フォーマットづくり
議事録、研修計画、課題整理など、実績報告につながる書式を標準化する。 - 介護助手人材の確保支援
短時間就労や地域人材の活用など、地域で入り口を広げる取り組みが効果的。 - ICT導入は“別制度”が前提
賃上げ補助金は人や運用、ICT補助金は設備、といった形で二段階の制度であることを理解する。
特に八尾市のように地域包括ケアが充実している自治体では、事業所間の情報共有や小さな改善の横展開が効果を発揮します。 「機器購入ができない」という一点だけで判断せず、制度を正しく使い分けることで、地域全体の質を高めることができます。
6. まとめ
今回のQ&Aが示しているのは、「今回の賃上げ補助金ではPCなどの機器購入はできない」という明確な線引きです。 しかしこれは、ICT導入そのものを否定するものではありません。
賃上げ補助金は「人と運用」、ICT導入補助は「設備」、というように役割を切り分けて活用することで、現場にとって最も効果的な改善が実現できます。
制度は複雑に見えますが、正しい組み合わせで活用すれば、職員の働きやすさ、サービスの質、そして地域の介護提供体制の持続性に大きく寄与します。 今回のQ&Aをきっかけに、地域としての取り組みをより強固にしていくことが求められています。

