【第二弾】デジタル終活の“落とし穴”まで整理する:家族が困らないための設計図と実務チェックリスト
こんにちは、総合福祉支援サポートのファイナンシャルプランナー岡田です。
「デジタル終活って、パスワードをメモしておけば良いんですよね?」
実はここが、いちばん多い誤解です。
いまのデジタルは、パスワードだけ分かっても入れないことがあります。二段階認証(SMS・認証アプリ)、端末ロック、クラウド、サブスク、SNSの追悼設定…。
そして何より、遺族が困るのは「情報がないこと」ではなく、入口が分からず、止め方が分からず、判断基準がないことです。
この記事では、国民生活センター等が注意喚起する「見えない契約」問題も踏まえつつ、実務として使えるレベルでデジタル終活を組み立てます。
最後に、現場でそのまま使える詳細チェックリスト(優先順位付き)も付けています。
0. まず押さえる用語(ここを理解すると一気に進みます)
デジタル遺品 スマホ・PC・クラウド・SNS・ネット上に残るデータ全般(写真、メール、アカウント、契約情報など)。
デジタル遺産 経済価値を持つもの(ネット銀行・証券・ポイント・電子マネー・暗号資産など)。
入口(アカウントの“鍵”) メールアドレス/電話番号/二段階認証(SMS・認証アプリ)/端末ロック。ここが分からないと、全てが止まります。
国民生活センターも、サブスク等は解約手続きをしない限り請求が続く点を含め、デジタル遺品の事前対策を呼びかけています。
1. デジタル終活の本質:やるべきは「パスワード保管」ではなく“設計”
デジタル終活は、次の3層を意識すると整理が簡単になります。
- 第1層:入口(ロック解除・メール・電話・二段階認証)
→ ここが不明だと、金融もサブスクもSNSも、ほぼ詰みます。 - 第2層:お金(決済・サブスク・ネット銀行・証券・ポイント)
→ 放置すると、請求が続く/資産に気づけない、が起きやすい領域です。 - 第3層:思い出と信用(写真・メッセージ・SNS・仕事データ)
→ 家族の判断が割れやすく、後から後悔が残りやすい領域です。
つまり、「ログイン情報を残す」より先に、誰が・どこまで・どう扱うかを決める必要があります。
2. よくある“詰みポイント”5つ(ここを先に潰すのが最短)
(1)二段階認証で入れない
パスワードが分かっても、最後に「SMSが届く電話番号」や「認証アプリ」が必要で止まります。
対策は、入口(電話番号・認証方法・バックアップコード等)を先に整理することです。
(2)サブスクが止められず請求が続く
国民生活センター等も注意喚起している通り、サブスクは解約しない限り請求が続きます。
対策は「契約一覧(サービス名/月額/支払い手段/解約手順)」の見える化です。
(3)写真・動画がクラウドにあって取り出せない
端末にあると思っていたデータが、実はクラウド(Google/Apple等)にしかないケースがあります。
対策は「保管場所」と「家族が取り出す方法」を決めておくことです。
(4)電話番号解約後にLINE等で問題が出る
LINEは電話番号が関係するため、回線解約後の扱いには注意が必要です。電話番号が再利用されることもあり得ます。
対策は「回線を解約する前に、必要なデータの扱い(バックアップ等)を決める」ことです。
(5)SNSが残り続け、周囲が混乱する
追悼アカウントへの移行、削除申請など、サービスごとに対応が異なります。
対策は「残す/削除/追悼へ」の方針を決め、家族が動ける情報(申請の窓口等)を残すことです。
3. 公式機能を使うと“家族の負担”が激減します(ここが第二弾の要点)
Apple:故人アカウント管理連絡先(デジタル遺産)
iPhone利用者は、Appleの「故人アカウント管理連絡先」を設定しておくと、万が一のときに遺族が所定の手続きを踏んでアクセス申請できる仕組みがあります。
「設定していなかった場合」でも、法的書類等を用意してアクセス申請する手続きが案内されています。
Google:アカウント無効化管理ツール
Googleアカウントには、一定期間利用がない場合に、指定した相手へデータを共有・通知する「アカウント無効化管理ツール」があります。
データ共有相手を最大10人まで指定でき、共有するデータ範囲も選べます。
Facebook:追悼アカウント管理人
Facebookでは、追悼アカウントになった場合にプロフィールを管理できる「追悼アカウント管理人」を指定できます。
亡くなった方のアカウントについての取り扱い(追悼・削除等)もヘルプで案内されています。
Instagram:近親者による削除リクエスト
Instagramは、近親者が故人アカウントの削除をリクエストできる旨が案内されています(申請には証明書類等が必要となる場合があります)。
SNSはサービスごとにルールが違うため、方針だけでも決めておくと遺族の迷いが減ります。
重要なのは、「パスワードを渡す」よりも先に、こうした公式の仕組みで“正規ルート”を用意することです。
セキュリティと家族の手続き負担を両立しやすくなります。
4. 失敗しない進め方(実務レベルの8ステップ)
STEP1:棚卸し(大枠でOK)
- 端末:スマホ/PC/タブレット
- 入口:主要メール/電話番号/認証アプリ
- お金:銀行・証券・決済・ポイント・暗号資産
- 契約:サブスク/通信/会員
- 思い出:写真・動画/メッセージ
- 信用:SNS/仕事データ
STEP2:最重要3点(入口)を先に固める
①スマホロックの解除方針、②主要メール、③二段階認証の整理。
この3点が整うと、全体が進みます。
STEP3:定期課金(サブスク)を洗い出す
明細(クレカ/キャリア決済)と、Apple/Googleのサブスク管理画面で照合し、一覧表にします。
STEP4:金融・決済を“存在確認”だけでも残す
ログイン情報まで書けなくても、「利用している会社名」だけ分かれば遺族が調べやすくなります。
STEP5:写真・動画は“保管場所”と“共有方法”を決める
思い出系は、家族が最も困りやすい領域です。共有アルバム等で先に共有する方法もあります。
STEP6:SNSは“残す/消す/追悼”の意思表示をする
全部決めなくて良いので、「基本方針」だけでも残すと、遺族の迷いが減ります。
STEP7:家族がやることを“手順書1枚”にする
遺族が欲しいのは、IDの羅列ではなく「何をどの順にするか」です。優先順位をつけます。
STEP8:保管方法を決める(安全設計)
書類・封筒・金庫・信頼できる人への預託など、生活に合う方法を採用します。
“保管場所が分からない”が最終的な詰みポイントなので、場所を必ず決めます。
5. 【詳細チェックリスト】デジタル終活:全20項目(優先順位つき)
「全部やる」必要はありません。まずは優先度A(入口)から取り組むのが、最も失敗しにくい進め方です。
| 優先 | No | チェック項目 | できている | 未対応 |
|---|---|---|---|---|
| A | 1 | スマホのロック解除方針(PIN/FaceID等)を家族が分かる形で用意している | □ | □ |
| A | 2 | 主要メールアドレス(各サービスの入口)を特定し、保管場所を決めている | □ | □ |
| A | 3 | 二段階認証(SMS/認証アプリ/バックアップコード)の有無と対策を整理している | □ | □ |
| A | 4 | Apple/Googleのアカウント(IDの所在)を家族が把握できる | □ | □ |
| A | 5 | 端末が複数ある場合、どれがメインか(SIM端末・サブ端末)を明確にしている | □ | □ |
| B | 6 | サブスク(定期課金)を一覧化している(サービス名/月額/支払方法/解約手順) | □ | □ |
| B | 7 | キャリア決済/Apple/Google決済の利用有無を把握している | □ | □ |
| B | 8 | ネット銀行・証券の利用有無(会社名)を整理している | □ | □ |
| B | 9 | 電子マネー・QR決済(残高がある可能性)を確認している | □ | □ |
| B | 10 | ポイント(楽天/Amazon等)を整理する方針を決めている | □ | □ |
| C | 11 | 写真・動画の保存先(端末/クラウド/外付け)を明確にしている | □ | □ |
| C | 12 | 家族が写真を取り出せる手段(共有アルバム等)を用意している | □ | □ |
| C | 13 | LINEなどメッセージアプリの扱い(残す/バックアップ/不要は削除)を決めている | □ | □ |
| C | 14 | SNS(Facebook/Instagram/X等)の方針(追悼/削除/非公開)を決めている | □ | □ |
| C | 15 | 仕事用のオンラインストレージ等(個人事業・副業含む)の有無を整理している | □ | □ |
| D | 16 | Appleの故人アカウント管理連絡先(該当する場合)を設定している | □ | □ |
| D | 17 | Googleのアカウント無効化管理ツール(該当する場合)を設定している | □ | □ |
| D | 18 | Facebookの追悼アカウント管理人(該当する場合)を設定している | □ | □ |
| D | 19 | 家族が行う手順(優先順位つき)を1枚にまとめ、保管場所を決めている | □ | □ |
| D | 20 | 困ったときの相談先(家族・専門家・消費生活センター等)を明記している | □ | □ |
実務のコツ:「Aだけ今月」「A+Bを来月まで」など、段階で進めると続きます。
6. 遺族側の“実務手順”も残しておくと、さらに親切です(もしもの時の動き方)
- 端末の確保(スマホ・PCを探して保管)
- 回線解約は急がない(二段階認証や各種手続きに必要な場合があるため)
- 主要メールを確認(通知・請求・契約の手がかり)
- 定期課金の停止(Apple/Googleのサブスク管理画面、クレカ明細確認)
- 金融・決済の存在確認(会社名が分かれば問い合わせ可能)
- SNSの扱い(追悼・削除など方針に沿って申請)
- 分からないときは消費生活センター等へ相談
自治体の消費生活センター通信でも、ID・パスワード不明で解約等に困るケースが紹介され、事前の対策が呼びかけられています。
7. まとめ:デジタル終活は「家族の時間」と「思い出」を守る準備です
デジタル終活は、難しいことを完璧にやる必要はありません。
大切なのは、入口(メール・電話・二段階認証)を整え、お金(サブスク・決済・金融)と思い出(写真・SNS)の扱いを決めておくことです。
今日できる最初の一歩は、チェックリストのA(入口)だけでも構いません。
「家族が困らない未来」を、現実的な形で作っていきましょう。
参考(公式情報・注意喚起)
- 国民生活センター:今から考えておきたい「デジタル終活」
- Apple サポート:故人アカウント管理連絡先/故人のApple Accountへのアクセス申請
- Google アカウント ヘルプ:アカウント無効化管理ツール
- Facebook ヘルプ:追悼アカウント管理人/亡くなった方のアカウントの扱い
- Instagram ヘルプ:亡くなった方のInstagramプロフィールの報告(削除リクエスト等)
- 自治体消費生活センター通信:デジタル遺品(サブスク等)の注意喚起

